■ -「目次」に戻ります - ■

デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り  61

「デンマークのCOVID-19 その3」

2020/9/19小野寺綾子 / ヘルシンガー


デンマークのCOVID-19 その3

夏休み期間は感染者が少なく、8月に大学や高校の新学期が始まり順調に社会活動が広がりました。 しかし、ユトランドの地方都市でいくつのクラスターが発生し、しだいにコロナウイルスは速い速度でフュン島、シーランド島の都市、コペンハーゲン市に拡大してきました。 8月末に誕生会やパーティ、夜の飲食を伴うカフェやバーなどで感染が広がりした。 やはりコロナウイルス感染の第2波が来たようです。 9月18日現在の1日の感染者は560名です。 これまでの合計感染者は約2万人、死亡者は627名。 若い世代に感染者数が多く、入院患者は約60名と春より少ないです。 知人から職場で感染者が出たので自宅待機をしている。 濃厚接触者なのでPCR検査を受けたとか、家族がコロナウイルスで入院している。 テレワークに戻ったなどという話を聞くようになりました。
PCR検査は1日2万5千件と積極的に行われています。 発熱の症状のある人は、医者の紹介で病院に行き検査をします。 自覚症状のない人は医師の紹介がなしで、専門のウエッブサイトから事前予約すれば全国に設置されたテストセンターで自由に受けられます。 これまで約200万人の人が検査を受けました。 デンマークの人口は550万人ですから、PCR検査率はかなり高いです。

8月22日より全国で12歳以上の人は電車や地下鉄、バス、フェリー、タクシーを利用する時にマスク着用が義務化しました。 着用の範囲は駅の構内、プラットホーム、バス停留所まで含みます。 マスクをしていないと乗車できません。 車掌に注意されてもマスクなしで乗り込もうとする人は警察に通報され、罰則で2500クローナ(約4万円)取られます。
感染拡大のため、9月19日から10月4日までは、バー、レストラン、カフェは午後10時で閉店です。 客と従業員もマスク着用が義務になりました。
3月に保健省、保健局は、コロナウイルス感染が広まってからマスク着用に非常に消極的な態度を取っていました。 方向転換した背景には、世界中で感染予防のためにマスクの着用が奨励されていることや、科学的な証明があると認めたからです。 さらに使い捨てマスクがない場合、布マスクでもよくなりました。 80%のデンマーク人はマスクを使ったことがありません。 テレビで医者出身の保健局長が自らどのようにマスクをつけるのかCMを流しています。 マスクの値段は少し高めで、5枚で約480円。50枚で約2500円です。 ホームレスなどの人には自治体が無料で配布します。 デンマーク人にマスク着用は抵抗なく受け入れられています。 バスや電車で老若男女がマスクをしている光景は、半年前には考えられませんでした。 マスクの着用義務期間は10月末までですが、コロウイルスの感染が広まってくれば、マスクの着用期間の延長や着用場所などがふえてくるでしょう。 私は夏休みに布マスクを7枚ほど作ったので、通勤時に使い捨てマスクと併用して使っています。

今年はほとんどのデンマーク人が7月の夏休みをデンマーク国内で過ごしました。 ロックダウンで停滞した経済の活性のため、政府が電車の切符割引を発行し、離島のフェリーを無料にしましたので、離島に多くの人が観光で訪れました。 美術館、博物館の入場料も半額になりました。
7月に工藤哲巳展を見にルイジアナ美術館を見に行った時、観客は非常に少なく、広い庭や館内は閑散としていました。 工藤哲巳(1935−1990)は最近日本の内外で回顧展が開かれ、業績が見直されている作家です。 ルイジアナ美術館の工藤哲巳展は、学芸員が倉庫にあった工藤の作品を見つけて興味を持ったことから始まりました。 作品は群青色の蛍光色で塗られたプラスチックの箱の中に、ちぎれた鼻、さなぎのような虫がうごめく不安や混乱した世界を表現しています。 この作品は1968年にルイジアナ美術館で開催されたグループ展に、工藤哲巳が参加した時ものだと分かりました。 工藤哲巳は独特の自然観を持ち、西洋文明を批判し、環境汚染など告発した芸術家です。 私もまとまった工藤哲巳の作品を見るのは初めてでした。
コロウイルスの感染予防のため、美術館は見学者に人気のあるカフェを変えました。 ビュッフェ式から給仕が注文を取りに来るようになりました。 カフェ内で食事をするテーブルを少なくして、場所によっては外にテーブルを配置ました。 ルイジアナ美術館を訪れる訪問者の内50%は海外からの人のため、コロナ渦の中で訪問者の減少傾向は美術館経営を圧迫しています。

写真は全て小野寺綾子氏撮影
全ての内容について無断転載、改変を禁じます。

enlargeenlarge  写真はクリックすると拡大します。

■ 電車など交通機関でマスク着用義務を警告する看板。

■ 電車など交通機関でマスク着用義務を警告する看板。

■ ホームでもマスク着用義務。

■ ホームでもマスク着用義務。

■ 道路上にあるコロナウイルスのPCR検査場の表示看板。

■ 道路上にあるコロナウイルスのPCR検査場の表示看板。

■ テントの中でPCR検査を待つため、並ぶ人。
中は広く、4人くらい検査を受けられるスペースがある。

■ テントの中でPCR検査を待つため、並ぶ人。
中は広く、4人くらい検査を受けられるスペースがある。

■ ルイジアナのテラスでくつろぐ見学者。

■ ルイジアナのテラスでくつろぐ見学者。

■ いつも賑やかな食堂は、テーブルや椅子が取り払われて、一部空になってしまった。

■ いつも賑やかな食堂は、テーブルや椅子が取り払われて、一部空になってしまった。

■ ルイジアナ美術館が所蔵している工藤哲巳の作品。
1968年作「電気の循環における放射能の培養」

■ ルイジアナ美術館が所蔵している工藤哲巳の作品。
1968年作「電気の循環における放射能の培養」

■ 工藤哲巳の作品。

■ 工藤哲巳の作品。

■ 工藤哲巳展の自画像。

■ 工藤哲巳展の自画像。

PAGE TOP

Copyright © 2006-2024  The Scandinavian Architecture and Design Institute of Japan  All rights reserved.