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デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り  17

「一人前のレンガ職人になるには」

2009/02/15小野寺綾子 / ヘルシンガー

ローマハウスの住宅を特色付けるものに、建築物の外壁をおおう黄土色のレンガや屋根の延長のように高低差のあるリズミカルな同色の塀があります。

現在、ローマハウスは高級住宅地になってしまいましたが、50年前は造船所などで働く労働者向けに建てられました。 間取りなど基本的な内部設計はありましたが、台所、風呂場など細かい内装は、家を購入した人たちが、自分たちで経済的に安く仕上げるようになっていました。 床暖房があり、レンガで造られた建物の内壁と外壁の間に、細かいフラミンゴのようなプラスチックの断熱材が入っています。

ウッソンが設計した、ローマハウスの姉妹版であるフレデンスボーにあるフレデンスボー集合住宅は、基本的に長期海外生活をした外交官、技術者などを入居者の対象にしていて、住宅の面積が広く、建てつけも良いのに対し、ローマハウスはちょっと安普請です。口の悪い人は外観のレンガにお金を使いすぎたと言います。

先日レンガ職人を養成するコペンハーゲンテク二スクスクールを訪問する機会があり、どのようにレンガ工を教育するのか話を聞きました。

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コペンハーゲンの南、グローストロップ市にある学校は、レンガ、大工、電気、土木、道路整備、アパート管理人などの科目があり、受講者のほとんどが男性です。 国内でレンガ工の養成課程では人数が一番多いそうです。 学校は独立行政になっており、国から経費が出るので、授業料は無料です。

レンガ職人になるには、学校で授業と実技を勉強する期間、左官会社で実習する期間を交互に5回ほど繰り返して最終実技試験を受け、3年半ほどかかります。

受講者はたいてい9年の義務教育糧を終了して入学してきます。 最初の基礎課程の授業では学校で、20週間ほど数学Fレベル、労働環境、職場の安全、素材などについて勉強します。 ここで、クラスの35%の人が、授業内容を理解できなくて脱落します。
数学Fは義務教育のレベルで、大学や専門大学に進学する高校では、A、Bレベルのデンマーク語、英語、数学を勉強します。

在学中から受講生は左官会社と労働契約して実習に入ります。 一回の実習期間は19-50週間で、その間は会社から給料、約9000dk(約15万円)もらいます。
実習が終わったら学校に戻り、5週間ほど数学、素材、レンガ技術、製図、修理技術などを勉強して、また実習する会社に戻ります。
受講生は教室でじっと授業を聞くより、現場に出て体を動かしているのが向いているので、学校の授業より実習に出ている期間のほうが長いです。
3年間半で学校の授業週は55週、実習期間は169週ほどになります。

最終の学校授業が終わったあと、晴れてSvend(スヴェン、若衆)になる Svend proeve( (スヴェンプロブ)と呼ばれる実技試験があります。
一週間かかる試験は年に2回あります。

スヴェンになると一人前と認められて、学校からの実習生を見習い弟子としてとることができます。

戦前、家はレンガで建てられるのが普通でした。
しかし、現在レンガで家を建てるのはとても高く、たとえば、最初にコンクリートの壁で内壁を作ってから、外壁をレンガで覆います。

この不況で個人住宅や民間アパートの需要がなくなり、レンガ工の失業率は30%と高いです。 倒産した左官会社、個人の小さい会社も多いそうです。 
不況で生き残っている左官会社は古いレンガの建物を修理する会社だそうです。 実習先の会社が倒産してしまった受講生があり、学校の進路指導係では、別の受け入れ先を探したり大変そうです。
失業したレンガ工が、別の職業選択コースを受けてタクシー運転手に転職するニュースがありました。

デンマーク全体で高校進学率が50%と上がり、テク二スクスクールに義務教育で学力が低い受講生が来て、悪いイメージがあると案内してくれた学校の方が言っていました。
昔は優秀な生徒が学校に入学してレンガ工になり、大学でアカデミックの勉強をした人より短期間で高い給料をもらっていたそうです。

学校は大変広く、電気の配線の部屋、小屋を建てている大工の部屋、アパートの地下にあるような暖房機の実習部屋、屋外では工事現場の足場を組み立てる場所、道路に石やコンクリートのタイルを敷き締める部屋などありました。
レンガの実習場所では課題にそって、受講生が各自レンガで壁を作る制作に取り組んでいました。 地下には土やセメントなどで汚れた体を洗うシャワー室がりました。

テク二カルスクールの校長は、2007年に沼津で開催された世界技能競技会にデンマーク団の随行員の一人として行きました。
ユトランドから参加したレンガ工が、レンガ積み部門で3位を取ったと話してくれました。自分の学校の受講者でなくて、ちょっと残念そうでした。

写真は全て小野寺綾子氏撮影
全ての内容について無断転載、改変を禁じます。

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瓦がのった低い塀

■ 瓦がのった低い塀

■ 瓦がのった低い塀

建物の外壁と塀

■ 建物の外壁と塀

■ 建物の外壁と塀

壁と住宅

■ 壁と住宅

■ 壁と住宅

レンガの実習風景

■ レンガの実習風景

■ レンガの実習風景

レンガ部門の先生

■ レンガ部門の先生

■ レンガ部門の先生

レンガの実習風景

■ レンガの実習風景

■ レンガの実習風景

足場の組み立て

■ 足場の組み立て

■ 足場の組み立て

大工の実習

■ 大工の実習

■ 大工の実習

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