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デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り  6

「円形型をした大学寮」

2007/09/20小野寺綾子 / ヘルシンガー

コペンハーゲン市内から東南に伸びている地下鉄(地上を走る地下鉄)で家具の見本市や国際会議場に使われるベラセンターに向かって12分ほど乗ると、ウアステッドと言う地区に出ます。
1995年に開発が始まる前は何もない荒野でしたが、地下鉄沿線にたくさんのビル、アパートが建ち始めました。 特に、市内では高さ制限、敷地面積、景観など建築基準が厳しいのに対し、ここでは建築家が制限から開放され、様々な形の建物が見られます。  市内から約5kmと近距離ですので、沿線にはコペンハーゲン大学、IT大学、国営放送局、斬新なデザインのオフィスビルや高級アパートが立ち並らんでいます。 将来建物の60%はオフィスビル、20%はアパート、残り20%は教育、文化などの施設になる予定です。

まだ周囲が完全に整地されないコペンハーゲン大学、IT大学のすぐ側に、円形型の大学寮 Tietgenkollegiet(チイタンコレギエッツ)が建っています。 この大学寮は2006年9月に入居がはじまった新しい大学寮です。 完成した時から建物のユニークさで見学を希望する人が多いです。 2001年にこの大学寮を作るため、未来の大学寮の設計コンペがあり、Lundgaard and Tranberg 設計事務所が一位になりました。

外からはそのユニークさが判りませんが、中に入ると真ん中に庭があり、庭を挟んで建物から出っぱった窓やテラスがリズミカルに並んでいます。  設計者は作る前にたくさんの大学寮を調べ、学生から聞き取り調査をしました。
寮では、学生が一人になれるプライベートな空間と他人と一緒になる公共の空間の兼ね合いが大事だということで、12の個室と1つの共同キッチンがグループごとのあります。
円形になった理由は、国の内外からの学生が四角い箱型の建物では互いに接触する空間がもてないだろうし、自分部屋から反対側の部屋が見えることで、プライベートと公共の空間の一体感を求めたそうです。
1200年代に作られた中国の円形の家からの影響もあるそうです。

部屋の数は360部屋。330部屋は個室で部屋の大きさは25�uから33�u、30部屋は二人部屋で45�uです。
家賃は月2.800クローナ(約58.800円)から4600クローナ(約96.600円)です。  建物の一階に共同学習室、ピアノ練習部屋、コインランドリー、自転車置き場、ポスト、管理人受付などがあります。2階から6階は住居になっています。
内装は女性2人が担当しています。 建物の壁や部屋のドアは木目の模様をしたデザインです。 日本の和紙をちぎった手法からインスピレーションを受けたものです。 カーテンは白、緑、黄色などを使っているので、明るい色が銅や錫の板で覆われた濃い茶色の建物にアクセントになっています。 共同部屋の椅子や郵便ポストなど色鮮やかです。  外には大きな住所番号、たとえば10など書いてあります。 夜は判りやすいように番号に電気がつくそうです。 この寮は人気があり、長い入居待ちです。

この寮を設計した建築事務所は、オペラハウスと反対岸に来年完成する国立演劇場を設計しています。
コペンハーゲン市内でも今建築中のアパートがありますが、大学寮を思わせるように部屋やテラスが出っぱったタイプの建物です。  大学寮のホームページwww.tietgenkollegiet.dk は、デンマーク語ですが、たくさん写真が見られます。

写真は全て小野寺綾子氏撮影
全ての内容について無断転載、改変を禁じます。

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円形をした建物外観

■ 円形をした建物外観

■ 円形をした建物外観

入り口の番号

■ 入り口の番号

■ 入り口の番号

中庭から見た光景

■ 中庭から見た光景

■ 中庭から見た光景

部屋と壁

■ 部屋と壁

■ 部屋と壁

ベランダの緑

■ ベランダの緑

■ ベランダの緑

郵便ポスト

■ 郵便ポスト

■ 郵便ポスト

学習室

■ 学習室

■ 学習室

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