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デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り  59

「デンマークのCOVID-19」

2020/4/4小野寺綾子 / ヘルシンガー


デンマークのCOVID-19

連日イタリア、スペインの悲惨なコロナウイルス感染のニュースが報道されています。
デンマークの様子は中々日本のニュースに取り上げられませんので、どんな状況なのかお知らせいたします。

桜が満開の素晴らしい春になっても、残念ながら復活祭休暇の過ぎの4月13日まで国はロックダウンしているので不要な外出は控え、家に居なくてはいけません。 4月4日の時点で、感染者は4077人、死亡161人、入院している人は507人です。 デンマークの人口は北海道とほぼ同じ約500万人です。
2月中旬までコロナウイルスは対岸の火事にようで、身近な問題ではありませんでした。
厚生省や保健庁はデンマークで感染者が出るのは低いと楽観的でした。
2月27日に発表された最初の感染者は北イタリアに家族でスキーに出かけたジャーナリストです。 本人は隔離され、家族、職場の同僚20人が2週間自宅に待機をしました。 2月の中旬の冬休みから下旬にかけて約60人のデンマーク人が北イタリアに、約300人がオーストリアのチロル地方にスキー行き、そこでコロナウイルスに感染して帰ってきたのです。 ドイツ、ノルウエーでも同じようにチロルで感染した人が多いと新聞で読みました。 28日以降毎日発表される感染者は2−3人でした。
3月6日最初政府から出されたコロナウイルス感染の対策は緩やかでした。 人と身体接触を避けるため、抱擁や握手を避けることや1000人以上集まらないことでした。 美術館は1日の入場者数を決めて、開館しました。 劇場は定員分の半数を入れ、一人分の座席を開けて座るようにしました。 バスは運転手の感染を防ぐため、乗客は出口から乗車です。 バスが満員にならないように、運転手は客の乗車否定ができました。 通勤通学時間に公共交通を使わないこと。 電車、バスは隣の席を開けて座ることなどです。

それが一転して深刻になったのは3月9日です。 この日は感染者が90人となり、3月10日には264名。 11日に514名に増加しました。
  3月11日夜8時半にWHOのパンデミック宣言を受け、政府の方針は大きく変わりました。
*保育園から大学、教育機関、図書館、美術館など文化施設、宗教施設などの閉館。
*レストラン、バー、ナイトクラブの閉鎖。
*公務員で緊急ではない仕事についている人は在宅勤務。
*民間企業も在宅勤務の奨励。
*100人以上の集会禁止。
3月12日 新型コロナウイルス特別措置法成立。
3月14日 4月13日まで空路、陸路、海路の国境封鎖。食料品などを運ぶトラックなどは通過可能です。旅行のために国境を越えられません。
3月15日 国が民間会社の75%の給与を負担する声明。
3月17日 女王が特別にテレビで国民に家にいるように呼びかけ、女王はコロナウイルスを「招かれざる客」だという言い方をしました。
同日政府の国民に対する要請はさらに厳しくなりました。
*10人以上の集会は家の中、外でも禁止。パーティーなど開いてはいけない。
不幸に葬式があった場合でも、10人以内しか教会に出席できない。
*ショッピングセンター、フィットネスクラブ、美容院、マッサージ室閉鎖。
*警官が見つけた違法者には罰金1500dkr。(約2万2千円)
*特養ホームの見舞いは自粛。
*高齢者は公共交通を利用しないように。
*歯科医は緊急の痛みなどだけ対応する。
3月31日 コロナウイルスの緊急法案成立。状況が危機的な場合2人以上集まることを禁止にできる。
日本と大きな違いは、風邪をひいた時などに、マスクをする習慣がないので市中でマスクをかけている人がいません。 欲しくても、手に入りません。 国立血清学研究所の医師は、使い捨てのマスクはマスクをした時、顔に隙間ができるので役に立たないと言っていました。 マスクの科学的な証明がないので、保健庁は前向きではありません。 最近病院の院内感染、特養ホームなどで介護士や高齢者の感染が深刻な問題とされています。 でも、病院の医師、看護婦、家庭医や特養ホームで働く介護士はマスクはしていません。 皮肉にも3月16日から春らしい日が続いているので、市民は運動不足のため外に散歩に出かけます。 この時も他の人と1.5mの間隔を開けることです。 コペンハーゲンの公園で散歩している人に対面で走ってくる人の息がかかるということで、公園でジョギングすることは禁止になりました。 湖に面した人気のある散歩道では、一方通行にしか歩けないところがあります。
薬局やスーパーなどは平常通りに開店しています。 店に入るには人数制限があります。 混んでいれば、店の外に線が引いてあるのでそこで順番を待ちます。 スーパーによって入り口に消毒液があり、手を消毒します。 使い捨ての手袋があり、商品を触るのに気になっている人は、その手袋をはめてもよいです。 店内の商品展示場には、客同士間隔を置くように注意する張り紙があちこちに貼られてます。 レジにも線が引いてあり、前の人と、後ろの人と1.5m開けるようになっています。 日本ならレジの人はマスクをしていますが、感染予防のため代りにプラスチックの透明な板が客とレジの間を仕切ります。 店内で客はすれ違う時非常に神経質そうです。 スーパーでは、食料品は十分あるので心配はありません。 緊急要請が出た頃、パンを作る生イーストが品切れでした。 薬局ではようやく長い間売り切れだった消毒液が買えるようになりました。 銀行は閉鎖していて、ATMしか使えません。 カードとネットバンクが浸透しているので、現金を使うことはあまりないため不便はありません。 ネットでスーパーに商品を注文して、自宅に配達してもらう人も増加しています。
人が家にいるので、空き巣の件数が激減したというニュースがありました。 家族でいる時間が長いので、皆が楽しめるジグソーパズルの購入が人気ということです。 逆にアルコールを飲む人が増えたり、夫の家庭内暴力(DV)の被害にあう妻や子供が増えたという報告もあります。 私も3月14日から仕事を休んで家にいます。 いつ仕事が始められるか見当がつきません。 週に一回近くのスーパーに買い物に行くだけで外出を控えています。 楽しみにしていた食事会や催しものが中止になりました。 思いがけない長い春休みです。 5月2,3日に予定されていたローマハウスの春季共同作業もありません。

これまで保健庁は少し熱があり、咳や鼻水の出る風邪の症状なら、家で休んでいなさいという方針でウイルス検査をしませんでした。 しかし、医療従事者から患者より感染される不安の声が上がりました。 初期のころより大量の検査数をこなせるようになったので、軽度の症状でもウイルス検査ができるようになりました。 その場合も従来通り家庭医に電話で連絡をしたり、夜間緊急医療に連絡します。 民間企業もこの医療危機に協力しています。 ジュースやウイスキーを製造していた会社が消毒薬の製造をするようになりました。 ある会社は消毒液の入れ物や、顔を覆うプラスチックやゴーグルの製造に変えました。 ノボノルディスクが24時間体制でコロナウイルスの検査に参加しています。
3月30日にあった首相の会見では、心配していた医療崩壊が起こらない予測がついていることに安堵していました。 感染者数や入院数など状況を考慮して、4月14日からロックダウンをなど徐々に解除していく準備があると言っていました。 これですぐに学校が開くわけでもなく、感染予防のルールがなくなるわけではありません。 依然としてコロナウイルスの感染が続く中、来週発表される政府の新しい方針に沿って、まだこれから先ちょっと我慢しなければならない日が続くでしょう。

写真は全て小野寺綾子氏撮影
全ての内容について無断転載、改変を禁じます。

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■ 人がまばらなヘルシンガーの目抜き通り。

■ 人がまばらなヘルシンガーの目抜き通り。

■ 小さなパン屋は客を一人づつ中にいれる。

■ 小さなパン屋は客を一人づつ中にいれる。

■ スーパーの入り口に置いてある消毒液とプラスチックの手袋。

■ スーパーの入り口に置いてある消毒液とプラスチックの手袋。

■ ミルクを取る時も間隔を開けよという注意。

■ ミルクを取る時も間隔を開けよという注意。

■ レジに進む時にも赤い線があり、間隔を開けよとの注意。

■ レジに進む時にも赤い線があり、間隔を開けよとの注意。

■ レジに並ぶときの間隔表示。

■ レジに並ぶときの間隔表示。

■ 4月上旬に咲くアネモネと呼ばれる一輪草。 今年は暖冬だったので、咲いた時期が2週間早かった。

■ 4月上旬に咲くアネモネと呼ばれる一輪草。 今年は暖冬だったので、咲いた時期が2週間早かった。

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