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デンマーク ・ ヘルシンガーからの便り  60

「デンマークのCOVID-19 その2」

2020/5/23小野寺綾子 / ヘルシンガー


デンマークのCOVID-19 その2

3月12日から2か月続いたコロナウイルスの緊急自粛要請は、国民がしっかり政府の命令を守ったお蔭で明らかに感染が低下しました。 5月22日現在、感染者数は14000人。 死亡者は561人、重症で入院者数は118人。 PCR検査者は約38万人。 専門家は国民の1.1%にあたる6万4千人が感染したのではないかと推測しています。 もうすぐPCR検査を希望する人は医者や職場を通さず自分で検査のサイトに申し込めば、全国の検査センターで受けられるようになります。 国立血清研究所(SSI)は、これから大きな第2波の流行はないと予測しています。

4月14日に4段階ある最初の解除が始まりました。
●第一段解除 4月11日から:保育園から小学校5年生まで。卒業試験を控えた高校3年生が通学可能。 裁判所、歯科医、私立の病院、クリニック、理髪店、美容院、カイロプラクティック療法士。
●第二段解除5月11日から:民間企業の在宅勤務から会社に勤務可能。 観客なしのプロスポーツ(サッカー)、野外のスポーツ活動(20人以内)、ショッピングセンター、小売業。 5月18日から:カフェ、レストラン、バー、図書館(返却、貸出のみ)。 高学年6年生から10年生通学。 教会、劇場、映画、美術館、博物館、動物園、水族館、国民高等学校、寄宿舎制学校。 6月8日まで10人以上の集会禁止。 違反の場合は罰金。
●第三段解除6月8日から:レゴランド、チボリ公園。 公務員の物理的な出勤。 30人―50人集まっても良いので、結婚式やパーティなど催し可能。
●第四段解除:8月上旬に発表の予定。
賭博場、フィットネスセンター、スイミングプール、野外遊園地。 500人以上の集会禁止。 野外蚤の市、数千人のコンサートなどは8月31日まで開けません。
  
3月12日の緊急宣言の時は、町も静かで、スーパーで会う人は見えないウイルスを怖がってピリピリしている感じでした。 今はずいぶん和やかな雰囲気になりました。 政府の感染対策は、人との間隔(2mから1mに変更)、手洗いです。 近隣諸国が国民にマスクの着用を義務化していますが、デンマークではまったく奨励されていません。 最近病院とクリニックの外来に行く機会がありました。 やはり医師、看護部、事務職などだれもマスクをしていません。 安全庁は逆に自分で縫ったり、編んだりした手製のマスクは製品テストに合格していないので、ネットなどで売買しないように警告しています。 間違った安心感を与えると言っています。
電車が満員にならないように郊外電車、長距離列車や長距離バスは50%の乗車率です。 乗車する前にスマホなどで無料の座席指定券を購入する必要があります。 感染を恐れてバスや電車の公共交通機関を使わず、自家用車で通勤する人が増えました。 せっかくCO.2削減のために公共交通機関の使用が奨励されて来ましたが、これでしばらく後戻りです。
2か月も家の居間や台所で不自然な姿勢で仕事をしたので、肩こりなどでマッサージに行く人が多くなったそうです。 自粛要請期間は天気も良く草木が芽吹く頃でしたので、自然に触れようと森に出かけた人が多かったです。 今年の夏休みはスペインやイタリアなど海外に行くのを諦めて国内で休みを過ごすことになるでしょう。 別荘の売買が盛んになってきました。 スウエーデンやドイツの国境はまだ閉鎖しています。 ユトランド半島は夏季ドイツから貸別荘を利用する多くの観光客が来るので、観光従事者は早く国境を開けて欲しいと希望しています。
5月22日にルイジアナ美術館が開館した時は、早速9時に文化関係が緩和になったことをアピールするため首相と文化大臣が訪れました。 ルイジアナは、コロナウイルス感染対策として入場時間を予約制にしました。 開館時間を9時から23時に広げ、入場者が密接しないように、閉鎖していた中庭にある池の周りを開放しています。 いつも混雑しているカフェの運営を変えます。 入場者の三分の一はスウエーデンなど外国からの入場者です。 その人たちが不在なので、館内は昔のルイジアナのようにゆったりしているという話です。

3月31日は入院患者数が約500人と感染が一番のピークを迎えた時期でした。PPムブラーの創始者、アイナー・ペーダーセン(Ejnar Pedersen 1923−)が3月31日にコロナウイルスの感染により入院先の病院で亡くなりました。97歳でした
。 アイナー・ペーターセン(以下EPと略)は、伝説的な家具職人で特にハンス・ウエグナーと組んで沢山の椅子を制作しました。 彼は1953年4月3日の兄のラース・ぺーダー・ペーダーセン(Lars Peder Pedersen )とコペンハーゲンの北にあるAlleroedeに家具工房を立ち上げました。 最後にEPの姿を見たのは、2014年春にあったウエグナーの生誕100周年の展覧会でした。 その時すでに90歳を超えていましたが、大きい手と肩が張った頑丈な体つきで非常に元気そうでした。 同工房のフェイスブックにはEPと息子、孫の三世代がウエグナーの家具を語る興味深い17分の白黒のビデオがあります。(英語で翻訳あり)
https://vimeo.com/280255342?fbclid=IwAR1f2y82XBqc3lPIkw_6AWxh5H0KFzsMt29gjmsQYkJCz6ru6BPi-Jw_hv8
EPは1997年に28年間パートナーだった建築家のハンナ・ケアホルムと一緒にSADIで講演会をしたと伺っています。

4月16日はマルガレーテ女王の80歳の誕生日でした。コロナウイルス感染がなかったら大々的に国を挙げて祝う予定でしたが、すべて行事は中止になりました。 女王の80歳の誕生日を祝うため、400脚の新しい晩餐会用の椅子が用意されていました 女王は100年前の晩餐会用の椅子は脚が細く、壊れやすいので、デンマークのブナの木を使った現代のデンマークの家具デザイナーに新しい椅子をデザインして欲しい希望がありました。 家具デザイナーのソーレン・ウルリック・ピーターセン(Soeren Ulrik Petersen1961-)とEPが共同で椅子をデザインして、PPムブラーが椅子を制作しました。 椅子は灰色に塗られ、背もたれに金色の王冠付けられています。 座席の部分はアルトの椅子611チェアのようにワイン色のヴェービングテープが編まれています。 椅子の値段は一脚15000クローナ(約24万円)です。 400脚の椅子は、カールスベア財団、レゴ社の財団など6つの文化財団が寄付しました。 2月21日に女王に椅子が贈呈された時の写真を見ると、女王の脇に立つEPの姿が映っていました。
下記の王室ホームページに8枚の贈呈の光景と椅子の写真があります。  http://kongehuset.dk/foto-video/hm-dronningen-og-hkh-kronprinsen-fik-praesenteret-ny-taffelstol?fbclid=IwAR0Ow4Pn4PWJTwKODcfCp7Ninke66IYMPbNmBPXRIzTfVp71Dxl_sVtc5DU

写真は全て小野寺綾子氏撮影
全ての内容について無断転載、改変を禁じます。

enlargeenlarge  写真はクリックすると拡大します。

■ ショッピングセンターの通り。 互いに距離を開けましょうという警告。

■ ショッピングセンターの通り。 互いに距離を開けましょうという警告。

■ スーパーの入り口にある警告:コロナウイスの症状の人は店に入ってはいけない。

■ スーパーの入り口にある警告:コロナウイスの症状の人は店に入ってはいけない。

■ 「交通機関で互いに気を付けましょう」というキャンペーンでもらった消毒液、バッジ。

■ 「交通機関で互いに気を付けましょう」というキャンペーンでもらった消毒液、バッジ。

■ 駅や建物、街角に貼ってあるコロナウイス感染キャンペーンポスター。 手洗い、咳をする時は肘で鼻と口もとを覆うこと。

■ 駅や建物、街角に貼ってあるコロナウイス感染キャンペーンポスター。 手洗い、咳をする時は肘で鼻と口もとを覆うこと。

■ ホームセンターに並ぶ消毒液。

■ ホームセンターに並ぶ消毒液。

■ 図書館のPCは使用不可。

■ 図書館のPCは使用不可。

■ 2014年4月ハンス・ウエグナー展。 パネルの奥、左側に白髪のEPの横顔見える。

■ 2014年4月ハンス・ウエグナー展。 パネルの奥、左側に白髪のEPの横顔見える。

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