私事になるが、今回大学院での学業を終えて引越しをした。 その越してきた家が、我ながらおもしろい家だと思うので、レポートさせていただきたいと思う。
様々なアパートや家を渡り歩くことは、生活者としてどのような家とその機能が自分の要望する生活に答えてくれるかを見極めるいい機会であると思う。 設計者としてはもちろん、反面教師的な事も含めて学ぶ点は多い。
今回越してきたアパートは私が4年前にヨーロッパに移り住んでからかねてからの夢であった、屋根裏の部屋である。
屋根裏の部屋=ロマンスあふれるメルヘンというような女性的憧れを常々持っていた事をここに白状したい。
ここノルウェーの地では古い一軒家を改修し、階ごともしくはさらに細かく区切っていくつものアパートとして売りだしたり、貸し出したりすることはごく一般的である。 その例にもれずこのアパートも修復された一軒の家の3階部分に位置し、この3階の全部分と地上へのアクセスとしての階段が我々のプライベート部分となっている。
以下に私なりに思うこの屋根裏部屋の魅力を挙げたいと思う。
屋根の形そのままの斜めの天井は水平な天井にはない垂直方向への広がりを意識させ、おおらかなボリュームを空間に与えてくれる。
むき出しの構造体はさらにその天井の形を強調し、工学的興味をそそると同時に素材への興味も沸き立たせてくれる。
各所に工夫されて設置された窓は外部への貴重な開口部に思えてくる。 斜めに配置された窓も新鮮である。
雨の日などに、斜めの窓にあたる雨粒を眺め、雨音を聞いていると、家がシェルターであるという建築本来の役目を思い起こさせてくれる。
全体として洞窟のようなこじんまりとした住まいはなかなかに小気味よいものだ。
ということで、面積60平方メートルほどの割りに動線の上手く考えられた使いやすいこのアパートを私は気に入っている。
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写真は全て吉田素子氏撮影
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